映画レビュー:「Bet Raise Fold」

Barry Carter による「Bet Raise Fold」のレビューです。これはオンラインポーカーの世界の物語を描いた新作ドキュメンタリーで、本日より公開されています。

//d3ltpfxjzvda6e.cloudfront.net/2013/06/25/martin-16x9.jpgブラックフライデーが起きて以降、ポーカーに関するメジャーなドキュメンタリーとして公開された作品は 3 つあります。 All In: The Poker Movie (英語)と Drawing Dead (英語)はどちらもいい作品でしたが、これはどちらかというと私のほうがあまり期待していなかったからで、その意味で意外とよかったなという驚き程度のものでした。

でもそういう低いハードル設定は今回の “Bet Raise Fold” には当てはまりませんでした。このポーカー映画はポーカーコミュニティの皆が待ち望んでいたものであり、作品の質も高いものが期待されていました。その意味ではこの作品には大きなプレッシャーがかかっていたと言えるでしょう。

オンラインポーカーのリアリティを伝える物語

//d3ltpfxjzvda6e.cloudfront.net/2013/06/25/brf.jpgこれまでのドキュメンタリーとは異なり、この作品はほぼオンラインポーカーの物語に的を絞って作られています。過去のドキュメンタリーはポーカー全体をカバーしようとする傾向にあり、多くの場合、ここ最近のポーカーの歴史においては軸となるはずのオンラインポーカーという要素を無視しがちだったと言えます。

「Bet Raise Fold」に関してはそうではありません。物語は、マネーメーカーブーム以降のオンラインポーカープレイヤーの視点からのみ語られています。

オンラインポーカーへのその語り口は幸いな事にとても敬意がこもっており知的でもあります。オンラインプレイヤーといえば「ごろつき」的なイメージが先行しがちなところがありますが、ここではオンライン世代のプレイヤーがいかに知的であって才能にあふれているかにスポットライトが当てられています。ここでは 3 人の好感の持てる知的なプレイヤーが主人公として取り上げられており、またポーカー界でも最も優れた知性を持つ人達がインタビューされています。

オンラインポーカーの深い深いあや

//d3ltpfxjzvda6e.cloudfront.net/2013/06/25/bet-raise-fold-official-trailer.jpgこの映画で最も優れていると思われるのは、オンラインポーカーがどれほど複雑で奥が深いものかということ、ボタンをクリックするだけの簡単なゲームでは決してないのだという所をしっかりと描き出して見せているところでしょう。ここでは、ポーカーの若き知性たちが自分たちのプレイしたハンドを振り返って説明するシーンの中に典型的に表れているように、ゲームの持つ複雑なあやを徹底的に描ききっています。

ドキュメンタリー作品の多くはこのゲームをバランスの取れた視点から見せようとしてきました。例えば、ビッグウィナーとともにビッグルーザーも取り上げることで、ポーカーというものの様々な運命にスポットライトを当ててきたのです。

「Bet Raise Fold」では堂々と勝ち組のオンラインプレイヤーにのみ焦点を当てていますし、私としてはそのことが何ら問題だとは思えません。というのもこれまでの映画ではオンライン世代というのはかなり誤解を持って伝えられてきたからです。その点でバランスが取られるというのはいいことです。

オンラインの世界のみが描かれていることに対する私の唯一の批判は、多分その専門知識の盛り込みすぎな部分があるところです。ポーカーをプレイしない観客でもこの作品のほとんどの部分を楽しめるのは間違いないのですが、いくつか予備知識の面でついていけない部分は出てくるように思われます。

シリアスなポーカープレイヤーはこの映画が大好きになるでしょう。この手の映画で全く一般向けにハードルが下げられていない作品というのは、これが初めてなのですから。

美しき回顧

//d3ltpfxjzvda6e.cloudfront.net/2013/06/25/danielle-16x9.jpgポーカーを長くプレイしてきた人たちは、この映画を懐古趣味的な観点から楽しいと感じることでしょう。作品全体は非常に巧みに作られており、その中には「オンラインギャンブル禁止法」とブラックフライデー以前の、輝いていた日々のポーカーがどんなものだったかをファンタジーのように思い出させてくれるような部分も含まれています。

そうした部分は、私を(いい意味で)悲しい思いにさせたりもするのです。というのも、この業界が過去には、つまり「栄光の時代」である 2003年から 2006 年にかけて、どれほど未開拓だったか、どれほどの金が稼げたのかということを、プレイヤーとして、あるいは業界関係者として思いださせるからです。

オンラインポーカーのスキルのレベルの凄さと、昔のことを思い出させれくれる以外に、この映画の中に出てくる最も衝撃的な部分は、Danielle Moon-Anderson の物語です。彼女は売り出し中のポーカープロであると同時に一家の大黒柱して家計を支えてもいました。

ポーカーを生業とするというのは普通は若い男で、大抵の場合家族を養うこととは無縁の人物です。しかし Danielle の物語は多くの人を感情的に引き付けるもので、彼女は間違いなくこの映画のスターだといえますし、多分プレイヤー以外の観客がこの作品で最も親しみを感じるのは彼女でしょう。あまりネタバレしないようにしておきますが、彼女はアメリカにいて、フルティルトだけを選んでプレイしていました。こう書くと彼女の物語がどこへ行き着くかは想像がつくと思います。 

描かれなかった部分

//d3ltpfxjzvda6e.cloudfront.net/2013/06/25/tony-dunstrrrrrrrrrr.jpgこのオンラインポーカーの世界の物語の中で、いくつか触れられていない大事な部分もありますが、それらについては何故触れていないのか理解できないこともないです。「Bet Raise Fold」は 上映時間が 100 分間の作品です。もしオンラインポーカーで起きたこと全部を入れ込もうとしたら、少なくともそれが 3 時間にはなったことでしょう。

アメリカ以外でのオンラインポーカーの成長についてはほとんど触れられておらず、ヨーロッパにいてヨーロッパのサイトで仕事をしてきた私にはそのことが引っかからずにはいられません。

でもまあこれは毎度のことでもあります。ヨーロッパを舞台として繰り広げられているゲームはポーカーを扱ったドキュメンタリーでは常に無視されてきていますが、それはつまり誰かがそれについて取り上げる余地があるということなのでしょう。

もうひとつこのドキュメンタリーへの批判としてあり得るのが、あまりにプロのオンラインポーカーに偏った描き方だということです。趣味レベルでプレイしているオンラインポーカープレイヤーについてはそれほど突っ込んだ取材がなされていません。客の中でシリアスなポーカープレイヤーたちはそのことをそれほど気に留めることはないでしょうが、プレイヤー以外の客たちはそうした部分が取り上げられていたほうが、楽しむことができたでしょう。

すでに述べたように、あらゆることを盛り込むのは不可能なわけで、こうした要素が最終的な公開版の中に入っていなかったということについては納得がいきます。でも、それでもやはり、あれが入っていなかったというのが間違っていると思うものがあります。それは Absolute Poker/UB でのスーパーユーザーを巡るスキャンダルの一件です。私はあの話こそが、オンラインポーカー関係のものでは、ポーカーブーム、禁止法とブラックフライデーにつぐ重要なストーリーだと考えています。だから、あの話が触れられていなかったことは驚きです。

編集担当者があの話を取り上げなかったと私が批判しているからといって、皆さんがこの映画を見なくてもいいといっているわけではありません。「Bet Raise Fold」はオンラインポーカーの物語を 100 分という時間で描き出したものとしては、とても正確だし楽しめるものに出来上がっています。こういう作品こそポーカーコミュニティが待ち望んでいたものであり、見てがっかりさせられることはないと思います。

「Bet Raise Fold」 公式サイト

Barry Carter l Barry Carter のツイッター

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